2011年09月27日

パリ・デザイン・ウイーク

世界一のエキスポ・シティ、パリ 

パリは毎年数千万人の観光客が国外から訪れるだけでなく、数多くの国際見本市が開催される世界最大のエキスポ・シティ(産業博覧都市)だ。ファッション・インテリア分野だけでも1年間に27もの国際見本市がある。しかし近年は、ロンドン、ミラノなどの追い上げも激しい。すでに世界では、ファッション以外でもデザインが消費材ビジネスの牽引役となってきており、それを推進するデザイン・ウイークが世界の都市という都市に拡がる中で、パリも遅まきながら今年初めて加わることになった。

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メゾン・エ・オブジェの主催社であるSAFIは、現在PARIS CAPITALE DE LA CREATION(創造の首都パリ)という計画をパリ地域圏経済開発公団とともに推進しており、このパリ・デザイン・ウィークも彼らの主催だ。SAFIの役員によれば、この数年ほどの間にイタリアなどのインテリア・メーカーもショールームを次々とパリに開店させているので、その広報やプロモーションの需要もあって、大規模なデザイン・イベントを市内で開催する機が熟したとのことだった。

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メゾン・エ・オブジェの後半にかぶる形で9月12日から始まったデザイン・ウイークは、市内各所のショップ、デザイン施設で18日まで開催された。その中心となったのは2年前に開設されたLIEU DU DESIGN(デザインの場所)とセーヌ河畔に新設されたCité de la Mode et du Design(モードとデザインのシティ)だ。工芸職人が界隈にまだ残るバスチーユ地区に設けられたLIEU DU DESIGNは、パリ市のデザイン拠点とも言えるところで、デザイン業界の交流を図り、デザイン賞の推進や企業へのデザイナー紹介を行う。写真はパリ・デザイン・ウイークの立役者である、左からSAFI代表エティエンヌ・コシェ氏、その右腕フランク・ミヨ氏、LIEU DU DESIGN代表のローラン・デュテイユ氏達だ。

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Cité de la Mode et du Designはアウステルリッツ駅に近い船荷倉庫を、レストラン・バーや貸しスペースにリノベートしたもので、今後は若手デザイナー育成のために低家賃でオフィスを貸し出していく予定だ。デザイン・ウイーク期間中はメゾン・エ・オブジェnow!の場外版now!le Offが開催されていた。メゾン・エ・オブジェに出展するにはまだもう一歩という若手が、まずここで作品発表してnow!へのチャレンジ権を手に入れるのだろう。

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パリも東日本を応援している 

そのCité de la Mode et du Designでは、SAFIが震災後の日本を応援する「Dessine Moi le Japon(日本を描いて) 展」を開催していたのでぜひ紹介したい。

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ジョルジュ・アルマーニ、高田賢三、クリスチャン・ラクロア、シャンタル・トーマスといったファッションデザイナーからハビエル・マリスカル、カリム・ラシッド、コンスタンチン・グルチッチといったプロダクトデザイナー、さらに建築家ジャン・ヌーヴェルやパティシエのピエール・エルメといった錚々たる人々が、日本の震災復興支援のためにデッサンや写真のコラージュなどを寄せてくれていた。いずれ来年早々にこれらの作品のオークションを行い、売上を被災地に寄付したいとのことだ。写真はフランスで実力派のインテリア・デザイナー、シルヴァン・ドゥビュイッソン氏が寄せていた作品。

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実は私が今回パリを訪問したのは、メゾン・エ・オブジェの視察のためだけでなく、日本の伝統工芸を紹介する2つの展示を行うためだった。パリには国際交流基金の海外拠点としてパリ日本文化会館という立派な文化施設がある。これまで数多くの展覧会を開催し、また映画・演劇、茶道・華道の紹介などを通じて、日本文化をフランスに浸透させてきた。

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ここで現在「東日本からの声」という、東北地方の職人達による手工芸品の展示を行っている。今や全国で伝統産業の職人は高齢化しその数は減るばかりだが、その中で今回の大震災が起こった。彼らが再び前向きに仕事に取り組む意欲を持てるよう、フランスを始めとする海外の理解者を増したいと考えた。

http://www.mcjp.fr/francais/expositions/messages-de-l-est-du-japon-303/messages-de-l-est-du-japon

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もう一つは日本の若手工芸作家を応援する、パリ目抜きの通りに設けた弊社ギャラリー・スペースでの展示だ。金沢にある卯辰山工芸工房という研修施設では、陶磁器、漆、染め、金工、ガラスの5分野で、日本全国から選抜された研修生が研鑽を積んでいる。そこから巣立った若手作家達は今や日本の工芸を支える輝かしい才能となっているが、経済的に厳しい状況にあるのは伝統産業の職人達と同じだ。日本の伝統文化を失われた過去のものとしないためにも、ぎりぎりのところで頑張っている彼らにエールを送り、勇気づけていきたいと思う。

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写真は、パリの有名日本レストラン「花輪」の1階にあるショールーム。場所はモンテーニュ通りから一歩入ったところで、向かいはシャネルの本社、隣はフランス第一のラジオ局で、プロフェッショナルな発信力が期待できる。

http://www.craftec-japan.com/ja/showroom/

船曳鴻紅

2011年09月08日

2011年9月メゾン&オブジェ

メゾン・エ・オブジェの9月はクリスマス商戦向けのインテリア・生活雑貨とアウトドア関連が中心ですが、今年は見本市の主催社であるSAFIが第一回パリ・デザイン・ウイークを立ち上げたため、例年に増して発信性が強くなりました。近年ビジネスがグローバル化してくると、見本市も1年に1回の開催では追いつかず、そのため常にフレッシュな情報が世界から集まっているという演出が求められるようになってきています。

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パリの北、シャルル・ドゴール空港に近いヴィル・パント(松の街)と呼ばれ周辺には松林が残る郊外に見本市会場はあります。ここでメゾン・エ・オブジェは年2回開催されます。

サローネと同様、世界のデザイン・ジャーナリストが最新情報を求めて集まるメゾン・エ・オブジェは、ホール毎にコンセプトと商材が振り分けられます。中でも特にデザイン性が強いのはホール7にある「now!」です。now!は、ビジネスというよりも新人発掘、これから伸びる商材を見つけるゾーンですが、ここ数年、各国政府が国内のデザイン振興をするための出展が目立ってきました。今年1月には日本から若手デザイナーを紹介するブースが出ましたし、この9月はシンガポール、タイ、スエーデンといったところが出ています。これからのグローバルな産業政策として、まずは90年代にイギリスが始めたデザイン振興策(若年層の失業対策の意味合いが濃かった)をなぞらえ、オリジナルな発想を持つ若手人材の発掘・育成が欠かせないという判断があります。

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スエーデンは近年、政府が厚いデザイン政策をとり、北欧諸国の中でも一歩先を行き始めています。

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東京の小規模なガラス・メーカーに特殊技術を見込んで製作依頼してくれたシンガポールのパトリック・シャ氏(製品は中央と右のガラス容器)。シンガポールにはこういった手仕事はないこともあり、日本の中小製造業の技術をとても高く評価してくれます。

ホール7の入口には、メゾン・エ・オブジェの主催社であるSAFIとパリ都市開発局がスポンサーする「TALENTS」というコーナーがあります。東日本震災への応援歌と、日本に住んだことがあり大の日本好きとして知られるエチエンヌ・コシェ社長の存在もあって、今年は6組の日本若手デザイナー集団がフィーチャーされました。中には三宅一生さんに推薦された高島一精さんが入っていたり、箱根寄せ木細工の若い職人達がグループとなった雑木囃子、また金沢卯辰山工芸工房出身の若手作家達がいます。特に自分の手で素材の段階から丁寧に作り上げる日本の工芸作品は、すでに国内でそのような手工芸産業をほとんど失ってしまった仏・英・独のビジターの目にあらためて新鮮に映ったようでした。

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ホール7の入口に設けられた「タレント」というコーナー。初日にはアランドロンなど有名人も来て華やぎを添えたそうです。

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見本市の目玉となる「TALENTS」に招待された卯辰山工芸工房出身の若手作家達。パリ市内の弊社TDCのギャラリーでは、13人の卯辰山工芸工房作家展を11月まで開催します。

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ホール7の「now!」ゾーンでは新進のデザイナー達がしのぎを削っています。中でも「molo」はメディアだけでなくバイヤーからも、リブ状の「紙」を間仕切り壁で高い関心を引いていました。経営するのは米建築家夫婦で、彼らが設計コンペをとった「ねぶたハウス」が昨年青森市に建設されています

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サンディ・チルウイッチ氏はもとはストッキングの会社勤め。1997年に左のストレッチ布を3段ボウルにした製品(長男の名前をつけたRay Tray)をヒットさせ、今や世界のテキスタイルメーカーとなりました。近年は建築家である夫も加わり、建築用床材にも進出しています。

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毎年のメゾン・エ・オブジェで最も活躍する日本人デザイナー島村卓実氏は、セーヌ河畔に新設されたCite de la Mode et du Design(モードとデザインのシティ)に入居するよう、熱いラブコールを送られていました。百人単位しか入居できないところ、すでに700を超す申し込みがあるそうです。

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ブナコは樹の細幅テープを巻いてボウルなどを作る、cuioraは米袋を縛る紙バンドのメーカー。そこで両者の協力でできたのが、紙バンドで作る照明の傘です。アジア製品に比べ格段に高価格ですが、オリジナリティとクオリティから、ドイツを中心として注文が入っていました。

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今や東北のクラフト産業の代表選手となったブナコ。写真の壁つけ照明は以前に日本で発表されたときは関心が薄かったそうですが、メゾン&オブジェで高評価でした。やはり照明の扱いが彼我では違います。

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江戸小紋染め「二葉」の小林社長もメゾン・エ・オブジェの常連組です。毎回売り方を工夫してて、今年はがま口を10個セットで出しました。これまでは作る商品カタログにこだわって、載せている染め柄以外はもって来なかったのですが、それでは自らの強みが出せないと気づいたのだそうです。そこで多種多様な染め柄を特定せず10個一括で売りに出したところ、いろいろな柄が楽しめると完売。

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今年フランスのクラフト作家達が集まったゾーンが出現していました。21世紀は生身の人間が演じるスポーツへの熱狂と同様に、ハンドメイドへの回帰の兆しを感じます。

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フランスでも伝統的な手工芸をコンテンポラリーな表現で生まれ変わらせようとしています。

一方、会場内に目立ち始めたのが3D印刷を使った製品でした。以前なら金型を含めて製作コストが合わないために手工芸に回されていたような製品が、3D印刷によって大量生産できるようになったのです。もちろん時間と人手をかけたハンドメイド製品に比べるとクオリティはまだまだですが、アイディア一発勝負で生まれてくるこれまで見たことのないような形までも作り出せるので多彩です。 昔は捺染技術を競った複雑なパターンのファブリックスが今や日本製の印刷機で安く作られるようになったのと同じで、ここでもまた人間の手業が駆逐されていくのかと若干疑問になります。

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 3Dプリンティング製作でカゴの中の鳥をオーナメントにした製品。

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樹脂系の素材を3Dプリンティングでプロダクト化すれば、複雑な形状の照明の傘でも耐火性や耐久性をクリアできるのです。

船曳鴻紅

2011年06月29日

久ノ浜の仮設店舗―プレハブの功罪

日本で市としては2番目の面積をもついわき市の中で、今回の東日本震災の被害が最も大きかった久ノ浜地区は、すぐ北に原発避難区域を抱えて今後の復興が微妙な地区です。そこで進められている仮設店舗の計画は、ある意味被災地域での生活再建の困難さをシンボリックに表しているのでご紹介します。

いわき市に行ってきたのは、5月連休明けににいわき市ボランティアセンターへの支援金をお届けした際、福祉活動家の村岡寛さんに地元の久ノ浜で被災店舗が寄り集まって仮設の商店街をつくる企画があるとうかがっていたからでした。その後手元に届いた地元紙に仮設商店街への補助金予算付けが市議会を通ったとの記事を見て、何かアドバイスをさしあげられればと再度ご連絡をとってみたのです。

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毎週火曜に開かれている久ノ浜商工会で仮設店舗参加者のお話を聞く。かろうじて残った商工会の建物の2階で。外には、撤去が進んでいるとはいえ、かなり瓦礫が残ったまま。

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仮設店舗(14区画)に入居予定の7社の方の不安は次のことに集約されていました。中には「商売」はあきらめている、地元へのボランティアとして「飲食」を提供するつもりで参加するという方も。

1)原発事故の収束の見通しが立たないので人口減が激しい。子供のいる家庭を中心に域外に出たまま戻らない住民が2/3もいる。

2)被災前の借金がまだ残っている人もおり、店舗の建設資金は公的補助、設備については1割自己負担で済むとは言え、はたして商売は成り立っていくのだろうか。

3)小学校の校庭を使う仮設なので、いずれ本設する場所をどう確保できるか。早く移設先を県や市が決定してほしい。

それに対して建築家であり町づくりアドバイザーでもある杉本教授のアドバイスは、参加者にとって 衝撃的だったと思います。

★「仮設」なんだから投資してはいけない。すでに被災して資産がゼロ以下に落ち込んでいるのに、これ以上金をつぎ込んでは明日がなくなる。本格的に再開させるときのために金も意欲もためておいてください。設備も備品もNPOなどで無料で提供してくれるところがある。当面は中古でいいじゃないですか。

★予定されているプレハブ建築は、工事現場での仮小屋程度の劣悪な環境なので、夏は暑く、冬は寒く、光熱費がすごくかかる。そのランニングコストも覚悟しておかなければいけない。

★行政の「公助」をあてにしていてはいけない。(地区計画などに)5年かかることも覚悟しなければならないだろう。まず災害の時には自分たちの命を守る「自助」があったが、今後はコミュニティなどを基礎にした「共助」の仕組みを中心に進める必要がある。

★建設される仮設店舗に関して言えば、(ウナギの寝床式に)お互いの店を戸境壁で囲み独立していては賑わいを作り出せない。お互いに協調し合って運営ができるような場を作らなければ。

私からも一言。仮設商店街に人寄せするためのイベントを打ちたいとおっしゃっているが、イベントには金も人も労力もかかる。それにエネルギーを割かれていては、自分たちが何のために商店街を復旧させたのかの意味も失いかねない。イベントは他力本願で行うノウハウをもつことが大事。

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杉本さんと照沼さんと、仮設店舗の建設が始まっていた小学校を一緒に視察しました。案内をしてくれたのは地元の福祉家、村岡さん。すでに大和リースに発注されていたプレハブ建物は6mの通路を挟んで@5坪の区画が7x2用意されるというもの。それに対して再開が未決定の小学校の立派な体育館が目に入る。居住性やコスト、営業面などを考えれば、一時的に体育館を「マーケット」として利用できないものかと思います。それが無理としても1店舗あたり500万円もの費用をかけられるなら、せめて木造でオープンなマーケットを作れば近隣の話題にはなるのに。文科省と経産省(中小企業基盤整備機構)の縦割り、ここでも「営業」を頭に入れていないお役所仕事の弊害が明らかに出ていました。

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放射能測定器の数値は、ちょっと車が通り抜けただけで簡単に0.4から2.0マイクロシーベルト/時に振れてしまう。一番放射能をためやすいのは樹木や草地なので、小学校では表土を入れ替えるだけでなく樹木の枝葉を伐採してしまう検討も行われているようでした。

最後に東京財団上席研究員の原田泰氏の震災復興コストに関する論考をご紹介します。http://www.tkfd.or.jp/topics/detail.php?id=272

震災復興に関わる非効率な公共投資を戒める氏の主張には十分に理があるように思われます。震災は今回が最後とは思われません。日本で起こりうる次なる災害への防災準備、また不幸にして将来起こってしまう災害の復旧資金を確保もせず、今回の震災対応のために国の異常な赤字国債発行高を増やし続けることは次世代の首を絞めにいく行為です。増税も必要ですが、まずは震災復興事業についても「事業仕分け」が求められるのではないでしょうか。

船曳鴻紅

仮設住宅展示場

原発処理で注目を集めるいわき市(1万数千人の東電関係者が新たに住民となっている)に、東海大の杉本教授と東京タイポディレクターズクラブの照沼さんとご一緒に行ってきました。いわき市内では最も津波被害の大きかった久ノ浜地区に、仮設商店街計画があるとのことでの視察でした。仮設住宅建設が急ピッチで進められる「いわきニュータウン」で4種類の仮設住宅を見学し、その間で建築水準に明らかな落差が見られたので報告します。

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未分譲の土地が大きく広がる「いわきニュータウン」。そこに6月末竣工を目指した数百戸の仮設住宅ができあがりつつあります。たまたま朝着いたばかりのいわき市駅で杉本さんが旧知の安藤研究室の方に遭遇。午後に絶対行ってみようということになりました。以下は仮設住宅4タイプ。

[1]木造

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杉板の板倉構法で知られる筑波大学安藤邦廣教授の仮設住宅群。

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板倉構法については下記サイトをご参照ください。http://www010.upp.so-net.ne.jp/onhome/kodawari/itakura.html

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杉本さんの手にあるのは落とし込みの杉の厚板。厚板を柱間に落とし込んで丈夫な壁とする構法は、遙か昔からあるサステナブル建築と言えるのでは。

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内部は杉板の節穴もそのままのナチュラル仕上げ。高い天井を利用してロフトもある。

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縁側もある。屋根には換気口。

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障子、板戸など建具もついている。

 [2]在来構法

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おそらく地元工務店が請け負った木造軸組構法。但し内壁はプラスターボード、屋根はトタン(言うまでもなく暑いし雨音がすごい)。

[3]プレハブ

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リース会社にストックさせているので、当然ながら応急的には最も早い。 しかしその居住性については、結露やカビなど解決されていない課題が多いはず。(参考:「仮設住宅の居住性」by 長岡技術大学 木村悟隆氏http://coastal.nagaokaut.ac.jp/~jisin/report/2-14.pdf

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岩手県、宮城県はすべてプレハブで対応。福島県だけ県知事の判断で国産材を利用した木造が(一部で)発注された。

 [4]プレハブ2

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3の現場仮小屋風に比べれば、ずいぶんまともになっている。しかし軽いプレハブが地面から飛んでいかないよう支持ロープは相変わらず用いられる。

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内部にはビニールクロスがはられ置き畳もあり、人によってはログハウス風の1より好む人もいるかも。建具は最小限で押し入れや各室の間仕切りはカーテンで。

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玄関前にはスロープが設けられて工夫の跡が。

以上4タイプ以外にも2階建て、コンテナ住宅などいろいろあると思います。いずれも1戸あたり300万円の予算で作られているはずですが、居住性には段違いの差違が見られます。ここで育つ子供達にとっては何よりも良いデザイン教材になると、ついブラックジョークが口をついて出てしまいました。

船曳鴻紅

2011年04月30日

ミラノ・サローネ(3) デザイナーを活かす街、ミラノ

ミラノ・デザイン・ウイークは、サローネ(見本市)が開く前夜から始まります。見本市の会期中は毎夜必ずどこかのメーカー・ショールーム、デザイン・イベント会場でレセプションが開かれ、関係者やメディアが集まって夜半まで人並みがとぎれることがありません。とりわけ見本市初日の夜は同時に170ほどのパーティが開かれ、主だったところだけでもとても見切ることができないほどです。レセプションは新作を真っ先にそこで見ることができる、趣向をこらした飲食を楽しめる、などのほか、デザイナー自身が新作を語る場となるので、デザイナーに会う、見る、大きなチャンスでもあるのです。たとえば個性的な家具を多く作り出しているメリタリアのパーティに行けば、71歳にしてなお意気軒昂なガエターノ・ペッシェに出会えるというわけです。

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ミラノが「デザインのメッカ」とも言うべき存在になったのは、ここに業界のトップを切るデザイナーが世界中から集まってくるからです。ミラノではデザイナーは人気者です。デザイン性に気を遣うショップであれば、商品が誰それのデザイナーによるものだという説明をつけてくるほどで、メーカー自身をブランドとするフランスと、そこが少し違うと思います。そういったミラノを作り出した立役者であるデザイナー達が、なぜミラノを特別視するのか、なぜミラノで仕事をしたがるのか、その理由を次にあげてみます。

・ファッションとも相互に影響し合い、デザインに対する社会的認知度が高い

・モデラー(模型制作者)の存在など、プロトタイプをつくる環境が整っている

・近郊にデザインを採用してくれる中小製造業が数多く存在する

・世界的に発信力があるデザイン誌を出す出版社が多くある

・デザイナーをプロモートする広報宣伝を行うエージェントが多くいる

・世界中のバイヤーがデザインを買いに来る

サローネ見本市の存在この頃はずいぶん変わってきましたが、特に以前は完成度の高いプロトタイプを作るモデラーがいることが大きな要因でした。他の理由は他都市でも何とか可能だったかと思いますが、この人的要因はそう簡単に実現できません。なぜそれが重要かというと、日本では製品化されたものをデザインとしますが、イタリアではコンセプト、アイディアの段階でもデザインなのです。家具メーカーも多くの場合(特に斬新な発想のものは)最初から在庫を持って出品するのではなく、プロトタイプとしてバイヤーに見せ受注数によって量産化に入るという手順を取ります。そのためにはデザイナーの企図するところを正確に実現できるモデラーが必要なのです。

またデザイナーが企業内にいる日本と違って、イタリアはほとんどがフリーランスで企業とはその都度契約で仕事をします。ということは突出した才能があれば、それまでメーカーの仕事をしていなくても自らのデザインを製品化させる、実現させる可能性が大きく開かれているということなのです。そしてこれまでは世界市場への輸出を図る中小メーカーがイタリアに数多く存在し、何らかの出会いに巡り会える機会が多くありました。最近は、圧倒的な製造業国として中国が世界市場進出してきたことによって、相対的にその機会は減りつつありますが。そんなミラノにデザイナーが夢を持って集まってくるのは当然と言えます。しかもプロ同士お互いの実力を批評し合って切磋琢磨できる環境は、志を持つ者にとってはとても魅力的なはずです。

しかしこの頃は残念なことに、そんなデザイナー達がお互いにアイディアを出し合い刺激し合う牧歌的な関係が崩れ始めているように見えます。企業のコマーシャリズムに消費されていくだけのデザインは、「サテリテ(サローネ見本市での若手デザイナー発表の場)」が今や新しいコンセプトやアイディアの提示の場ではなく、商品化してくれるメーカーを探す場となってきてしまっていることに、象徴的に表れています。グローバリゼーションとともにミラノがデザイン村ではなく、世界の製造業の一コマとして組み入れられてしまったからでしょうか。

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ガエターノ・ペッシェは今年トリエンナーレ会場でインスタレーションを発表するなど、いまだに現役として精力的に活躍している。

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若干33歳の仏人デザイナーオラ・イトーがシトロエンの未来カーを発表パリのシャンゼリゼにあるトヨタショールームも手がけた。

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COSMITとシトロエンとモンテナポレオーネ商店街のコラボレーション。通りの端から端まで若手デザイナー作品を展示していた。

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トルトーナ地区にあるステラ・マッカートニー・ギャラリーを借りてのエル・デコYoung Talent展。こういった新人発掘がフォーリサローネの真骨頂

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モローゾから新作「MOON」を発表した吉岡徳仁氏。モローゾは斬新な家具メーカーとして世界的に有名だが、そこのショールームは彼のワンマン・ショーとなっていた

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ミラノの日本人デザイナー達が知人の外人デザイナー達に声を掛けて、東日本大震災のためのCharity Box展を実現短期間に54ほどの作品が制作され持ち寄られた。(写真は伊藤節&志信氏)

船曳鴻紅(朝日.com 2011年4月出稿)

フォーリ・サローネ(2) ミラノ市内イベント

前回ご説明したようにサローネは見本市会場で行われる家具フェアのことですが、ここまでミラノ・サローネが世界的な話題となったのは、90年代に「インテルニ」誌の編集長になったジルダ・ボイヤルディが、フォーリ・サローネ(=サローネ場外)で開催されるデザイン・イベントの数々を小冊子にまとめて紹介するようになってからと思います。それまでは家具見本市に世界から集まるデザイン関係者を狙って、市内でゲリラ的に開催されていたイベントが広く認知されるようになったためで、今やその数はインテルニに載っているだけでも400近くになっています。今回はその中からミラノ大学、COSMIT(サローネの主催社)、トリエンナーレの3会場と、トルトーナ地区を中心に報告します。

雑誌付録のガイドブックを成功させたジルダは、次にミラノ市と組んだ一大デザイン・イベントを企画するようになりました。ここ4年ほどはミラノ大学のキャンパスを借りて、スポンサー企業とデザイナーを結びつけた作品の数々を特別展示しています。今年は「ミュータント・アーキテクチャー(変異する建築)」というテーマで、サステナブル・デザインの観点から簡単に解体、移動できて、かつ様々な機能にリユースできる作品を、世界的な建築家やデザイナー達に制作を依頼して発表しています。中でも伊藤節&志信がコンテナの壁材料(端材)を利用してデザインした移動家具は、野外ベンチ、移動屋台、インフォメーション・スタンドともなって、キャンパス中で使われていました。

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ミラノ大学のインテルニ展。構内の回廊や庭には有名デザイナーによる作品が数多く展示されている。手前下はアート・コンテナ社製移動野外家具。

その一方で本家本元を名乗るCOSMITの市内キャンペーン展は「PRINCIPIA(原理)」で、デニス・サンタキアラがキュレーションした8つの部屋で次世代アートの実体を捉えようとしていました。いずれもサイエンスとアートの合体を強く意識したもので、ロボットや3Dからナノテクノロジーまで斬新な構想のデザイン・アートが並んでいます。サンタキアラは、アーティスト(デザイナー)はトリックを見せないマジシャンのようなものだと語っていて、テクノロジーを顕わにしないで効果を生み出すのがデザインというコンセプトは明解です。仮設テントが市の中心部にあるDUOMO広場に設けられて、新しもの好きで未来志向が強いミラノ市民が子供連れで来場し熱狂していました。

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COSMIT50周年記念特別展でのコットン・ベースの液体を人体に吹き付けて作った服。

センピオーネ公園内にあり市の第三セクターが運営するトリエンナーレ会場は、毎年複数の重要なデザイン・イベントに貸し出されるので必見の場所となっています。今年も、深澤直人の椅子を展示するマルニ木工を始めとして、日本たばこ産業(JT)、イタリア最大の照明会社イ・グッチーニ、デザイン・タイルのビザッツァなどがそれぞれ趣向を凝らした展示を行っていました。なぜ日本たばこが?と不思議に思ったのですが、聞いてみたところJTが買収したイタリアのたばこ会社が、若いデザイナー達を対象に行った「吸い殻捨て防止キャンペーン」のデザインコンペ展でした。展示方法が回転仕掛けになっていることもあって、多くの若い来場者に狭い部屋が占領されるほどにぎわっていました。

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トリエンナーレ会場で発表されていたJTイタリアのデザイン・コンペ授賞展

最後にフォーリ・サローネの代表格ともなるトルトーナ地区を紹介します。もともとは運河沿いの倉庫街だったのが、この十数年でデザイン・エリアに変貌したもので、安藤忠雄が設計したアルマーニ・テアトロもここにあります。ここだけでも50を超えるデザイン展が開催され、見本市に来た客が寄れるように毎夜8時頃まで開いているので、夜は狭い街路に人があふれて一層にぎわいます。中でも話題を集めていたのがキヤノンとデュポンでした。今年で4年目のキヤノンは昨年もプロジェクション効果満点のインスタレーションでしたが、今回はより幻想的でかつブランド・イメージをアピールした秀逸なものでした。デュポンはディズニーとタイアップした「トロン:レガシー」展で多くの来場者を集め、こちらも開発した新素材をフューチャリスティックな展示の中にきちんと生かしています。例年トルトーナ地区には日本企業も数多く出展するのですが、今年はキヤノンの他は東芝、INAXと三菱化学を見ることができました。私が注目したのは三菱化学が英国子会社の名で発表していたOLED(有機EL)照明展です。照明と音響の融合など高い技術をWHY?と思わせる製品に仕上げていて、デザインの奥行きの深さを感じさせてくれました

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キヤノン「NEOREAL」展。無数の建築用つぼ糸を張って、あたかもプロジェクションの光線が放たれているかのような効果を生んでいる。

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デュポンのトロン展。写真は伊藤節&志信デザインで、寝椅子はデュポン・コーリアン、照明はデュポン・タイベック製の和紙と見間違える新素材を用いている。

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鄭秀和による三菱化学の有機ELインスタレーションは、昼光色と電球色が入り混じる日本の都市風景を表現。

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エルメスがフォーリ・サローネでは初めて、本格的なイベントを行っていた。坂茂設計の紙管による館を作り、エルメスの皮革技術を存分に発揮した家具を展示。

船曳鴻紅(朝日.com 2011年4月出稿)

ミラノ・サローネ(1) 50周年

ここ5~6年、深澤直人さんを始めとする日本人デザイナーの活躍もあってか、世界のデザインのメッカとして日本でも「ミラノ・サローネ」の名声は高まるばかりです。このサローネ(=フェア)というのは、もともとは純粋に家具の見本市で、それが今年50周年を迎えました。1961年に328社の参加、1万2000人のビジター数、1万1000平米の展示面積で始まったサローネも、今や2775社の参加、33万人のビジター(2010年実績)、21万平米の展示面積にまでふくれあがり、インテリアに関しては世界最大、最高の見本市となっています。

今年のサローネは、中心はもちろん家具見本市ですが、それに隔年で開催される照明見本市(Euroluce)、オフィス家具見本市が併催されています。また多くの日本の若手デザイナーが世界への登竜門としてあこがれるサテリテ(SaloneSatellite)も今年で14年目となりました。これらの見本市への出展ブース3000弱が20のホールに展開するのですから、すべてをくまなく見るには6日間の会期全日を費やしてもどうかと思えるほどです。そこでサローネを最もよく代表するデザイン家具、デザイン照明、サテリテの3つに絞ってご紹介することにします。

まず今年の大きな変化は、最もデザイン性の強いブランド・メーカーのホールが8と12から18と20に移ったことでした。そのため人の流れも大きく変わり、EuroluceやSatelliteとの距離が縮まったことで、よりデザイン見本市としてのサローネの性格が鮮明になったように思います。その代表格としてあげられるのは、まずカルテル、モローゾ、メリタリア、エドラ、マジスといったイタリア勢です。その中でもとりわけ元気なのが50年以上の歴史を刻むプラスチック家具メーカーのカルテル社。毎年サローネでも趣向に富んだ展示を行っていて、今年はネオンがまぶしいアメリカのダウンタウン調。「New Stars」のタイトルできら星のごとく有名デザイナーを起用した新作が並ぶ中で、中央には吉岡徳仁デザインの透明アクリル家具「INVISIBLE」がフィーチャーされていました。対してモローゾの方は、長年中心的にデザインを手がけてきたパトリシア・ウルキオラお得意のニッティング家具「BIKNIT」です。今ウルキオラは、人に寄り添う家具が作りたいという彼女の本質と時代の波とが絶妙にハーモナイズして絶好調といった感があります。

Euroluceは、2年前と比べても圧倒的にLEDの世界になっていました。照明のプロによれば、LEDは省電力や照度、配光、色味の点などで決して唯一の選択ではないとのことですが、ともかく新製品にはほとんどタングステン、蛍光灯は用いられなくなっています。それでもイタリアのEuroluceはさすがに、ドイツ・フランクフルトで開催されるLight & Build照明見本市のようには機能性が前面に出ることはありません。いまだに昔ながらのシャンデリアもありますし、LEDを使うにしてもこれ見よがしにせず、機能説明でなくユーザーの感性に訴えることで競争を勝ち抜くというポリシーを貫いているように見えます。

今やサローネの目玉商品ともなったサテリテは、今年も日本勢が大いに気を吐く結果となりました。昨年サローネの主催社COSMITが初めて設けたデザイン賞第1回目、初のグランプリに輝いたのが田村ナオさん。ニューヨークで活躍する日本女性デザイナーでした。今年の授賞はまだ発表されていませんが、テーマが「照明」だけに、欧米勢に比べてもエンジニアリングに強い日本勢の優勢を感じます。原発の放射能漏れで風評被害も起こっている日本としては、ぜひ入賞で元気を取り戻してほしいと思います。

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カルテルの60年はイタリア・デザインが世界に普及する土台を作ってきた。フィリップ・スタルク・デザインの「ルイ・ゴースト」はMOMAでもベストセラー家具となっている。ホール20の鳥羽口にインパクトの強いブースデザインを実現。

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インドネシアのバリで編ませた「Flo Chair」など、伝統工芸的要素をみごとに現代化させる手腕を持つパトリシア・ウルキオラのMOROSO社新作「BIKNIT」

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もうすぐ80歳になるフィンランドのエーロ・アールニオが、MAGIS社のためにデザインしたペンギン・マスコット。MAGIS社はこの数年、子供家具に力を入れていて、マーク・ニューソンさえ子供用二段ベッドをデザインしていた。

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イタリア照明界の代表選手FLOSは、今年はスタルク等9人のデザイナーをフィーチャーさせた展示で、デザイン性でも技術性でもぬきんでた実力を示していた。写真はロン・ジラッドによるLEDの新作。限りなく細い菅にLEDを仕込むのは放熱処理が難しいはずだが、それをさらりと見せるところがイタリア風。

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昨年はサテリテに学生発表として参加した神戸芸工大。今年は学科の先生も加わってグループ展としたが、自主テーマが飛行機で持ち帰られるお土産家具というユニークな発想。組み立てに仕口を利用したコート・スタンド、留め具を使ってパーツをアーチ状に寄せる「大聖堂」と名付けた小テーブルなど、匠の技が冴えていた。

船曳鴻紅(朝日.com 2011年4月出稿)

2011年03月06日

メッセ・シティ

世界の都市の中には、都市規模の大小に関わらず国際会議を核とした観光都市を目指しているところがあります。 国際会議場施設や宿泊施設などのハード面、通訳などのソフト面での体制が整備されており、何より集まってくる参加者を飽きさせない観光の要素が重要視されます。その意味ではラスヴェガスが世界で最も有名なコンベンション・シティと言えます。

 一方ドイツを始めとした欧州の諸都市の中には、国際見本市を主軸として地元経済の活性化を図るメッセ・シティとも呼べるところがあります。世界最大級の産業見本市であるハノーバー・メッセを始めとして、ドイツにはハンザ同盟以来の交易の伝統が支える様々な見本市が、ケルン、フランクフルト、ハンブルグ、ミュンヘン、ベルリンで年々開催され、見本市を核として都市が発展してきたと言っても過言ではありません。

それに比べ、パリ、ロンドン、ミラノは都市の規模から言っても一桁大きい程の大都市で、単純にメッセ・シティとは呼べないとは思いますが、近年これらの都市も国際見本市の経済効果を大いに計算に入れるようになってきました。以下、少しご紹介してみます。

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4月のサローネ・デル・モビーレ国際家具見本市の会期中にミラノに集中するデザインイベントは、「ミラノ・サローネ」と総称されるようになってきています。写真の新見本市会場は市内の旧会場(そこも再開発されている)から2006年に移ってきたもので、展示面積は34万5000平米。

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今や世界にデザイン・シティを標榜するイタリアのミラノ市は、女性市長レティツィア・モラッティ女史がベルルスコーニ政権の閣僚だったこともあり、経済と政治とを混合させてデザインを核とした再開発を推し進めています。リーマンショック以来少し陰りが見え始めたミラノデザインをテコ入れできるでしょうか。

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ミラノ・サローネ期間中にミラノ市内で開催されるイベント群フオーリ・サローネ(もともとはデザイン誌であるINTERNIが街中で同時期に開催されるイベントをまとめて紹介し始めたもの)の中心となるトルトーナ地区で、昔は運河沿いの倉庫が並ぶうらぶれた地区でした。二十数年前程から家賃の安さと内部空間の大きさからデザイン関係企業が移ってくるようになり、ずいぶんと様子が変わりました。サローネの時はまだ多く残る倉庫を一時借りして百に及ぶ数のデザイン展が開かれます。

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ミラノのセレクトショップの先駆け「ディエチ・コルソ・コモ」もあるコルソ・コモ通り。周辺では大規模な再開発が進行中で、ガリバルディ駅を中心に一大商業地区が生まれようとしています。

 パリはさすがに世界のパリ。他国の文化をうまくフランス文化としてブランディングさせ、ファッションを始め付加価値産業のメリットを十分に吸い上げてきたパリ市は、今後も世界一のコンベンション・シティとして拡張していく予定です。その代表格が国際室内装飾見本市のメゾン・エ・オブジェ、パリ首都圏行政においても歴然とその影響力が及んでいます。雑貨見本市としての規模はフランクフルトのアンビエンテに及びませんがそのメディア発信力は抜群で、ファッションと並んでパリをこれからも世界の消費文化のトレンド・セッターとする役割のようです。

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2010年パリ・ノールの見本市会場に新設されたホール7。これでホールは8つになり、総面積が19.1万平米に増えました。

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パリ市内にはもう2つ見本市会場がありますが、昔からあるので市の中心部に近く、よくファッションなどに使われるのはポルト・ド・ヴェルサイユの会場。

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2009年にオープンしたパリのデザインセンター。フランスの高級ブランドを支える職人達が数多く集まるバスチーユ地区にありますが、入口はここかと思うほど小さい。ところが中に入ると、右側がエルメスの工場、左がLIEU DU DESIGNとなっています。

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フランス第二の都市リヨンでは、フランス料理のメッカであることを象徴するポール・ボギューズ料理コンクールが、食材見本市SIRHAの中で行われます。見本市会場は公共交通機関が未整備でアクセスが悪いのが難点で15.5万平米。

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本家本元のドイツ最大のメッセ会場、ハノバーメッセ。55.4万平米あり、東京のビッグ・サイトのざっと十倍。デザイン賞「iF」の本拠地であり2000年には万国会場になっています。

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サローネと並ぶ家具見本市「imm」もここで開催されます。28.6万平米あります。

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ハノーバーに次ぐ大きさで47.5万平米のフランクフルト・メッセ。一昨年新しく11号館ができあがり、アンビエンテでは各館のジャンル構成が大幅に変わったため混乱していましたが、今年は何とか落ち着いてきたようです。

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ドイツの京都とも呼べる南のミュンヘンは、ドイツの中でも富裕層が多い街です。新ミュンヘン会場は43.3万平米。周辺に自動車の街シュツッツガルトがあったりするので、機械や産業資材見本市も結構開かれています。

欧州以外の国際見本市

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中近東のラスベガスになろうとしたドバイ。コンベンションなどは大型ホテルで、見本市会場はさほど大きくない4.3万平米。

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モスクワにはサローネが進出した後、昨年からメゾン&オブジェも開かれています。欧州の高付加価値型見本市にとっては、中国はまだ鬼門ですが、ロシアは良い市場ととらえられているようです。

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アメリカは年に1回の見本市よりは、常設ショールームのデザインセンターが主流の国で、オフィス家具のネオコンが開かれるシカゴのマーチャンダイズ・マートも、ほとんどはショールーム・フロアとなっています。

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その他にも、アジアのコンベンション・シティである香港、シンガポールがあり、そしてそれらを急追しているのが上海です。左は市街地にある昔からの上海展覧中心2.2万平米、右は浦東の開発地区にある上海新国際博覧中心10.3万平米です。

では日本はと言うと、まず東京、横浜、神戸でしょう。しかし日本独自のデザイン都市となれば、京都ということになります。それに近年石川県金沢市が加わりました。金沢市は80年代までデザインの潮流から外れていた分、自らを一周遅れのトップランナーと称して新たな工芸の拠点地として市政を進めてきました。21世紀美術館の開館はアートの世界だけでなく広く金沢を国内外に知らしめることに成功しています。

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金沢の石川県庁の建物をリノベートして今春オープンした「しいのき迎賓館」。「ひらまつ」経営の「ポール・ボギューズ」レストランは金沢城の壮大な石垣を眺めながら食事ができる絶好のロケーション。

ところでこの金沢が工芸、クラフトのメッカとなったのには市営の「卯辰山工芸工房」の存在が欠かせません。全国から有為な工芸作家志望の学生を集め奨学金を支給して研修させています。彼らの多くが卒業後も金沢に住み続けることが金沢文化を底で支えているのです。都市を活性化させるには単にイベントを仕掛けるだけでは無意味で、このような人が育つ背景があってこそのデザイン開発だと思います。いつでも最後は人の資質に関わってくる問題なのでしょう。

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昨年の修了作品講評会の講師の面々、左から武田厚(多摩美客員教授)、私、大樋長左エ門(陶芸家・工房長)、小松喨一(館長)、久世建二(金沢美大学長)、相川繁隆(館長補佐)の各氏。

船曳 鴻紅

2011年01月31日

メゾン&オブジェ(3) 見本市出展を成功させる秘訣

前2回、メゾン・エ・オブジェの見本市について報告してきました。今年は特に日本企業の出展が多く、過去最大になりました。これまで日本国内の需要だけでやってきた生産者が、いよいよ海外の市場をあてにしなければ生き残れない段階になってきたことを表していると思います。しかし出展前の十分な準備がされていなかったり、「補助金」が出たので無理矢理に出展してくる団体もあったりして、総じてその結果ははかばかしくありません。そこで少しでもこれから出展する方々に成功していただくよう、経産省のsozo_comm事業に関わった経験、また今回のcrafTec出展*での観察から、「成功の秘訣」といったものをおこがましいようですがお伝えしたいと思います。

1)まず出展事業者自身の「熱意」、これに勝るものはありません。よく語学に自信がないからと雇った通訳に委せきりにする出展者の方を見かけますが、拙い英語でもメーカー自身が熱く説明することでバイヤーも惹きつけられます。実演販売に共通するものがあるのでしょう。

2)見本市会場内で良いロケーションにブースが出せるよう努力し目をひく展示を行えば、少なくとも引き合いの数は倍増します。出展してから場所の悪さに気がつかれても、それは勉強不足というもの。人気見本市ほど好ロケーションは難しくなりますが、主催社に対するロビイングをするぐらいの気迫があっても良いのではないでしょうか。また自社商品のオリジナル性が高く特異な場合は、そのジャンルの商品が並ぶゾーンを選ばずに他ジャンル商品のブースの間に交じる方が良い場合があります。ライフスタイル型商品として受け入れられやすいからです。

3)世界でオンリーワンと呼べるようなオリジナルな商品を開発することができれば、富士山の8合目まで登ってしまったようなものです。狭い日本では流通業者に相手にされなくとも、国際的な海外見本市では世界のニッチな市場を狙う「ロングテール」商品として認知される可能性があります。

4)当たり前のことですが、日本でできる準備は十分に行っていく。商品の機能、素材、バリエーション、OEMの可能性など、バイヤーからの質問に何でも1分間以内で説明しきれるようパンフや資料を用意しておくと助かります。さらにターゲット市場に同種商品がある場合はその市場価格をネットで調べ、自社商品価格を円高でも2~3割高までに抑えておけば、単なる引き合いでなく即そこで成約する確率が高まります。

5)「文化」の押しつけは通りません。確かに日本は島国固有の文化を育んで来たと言えますが、海外の消費者はそれに興味を持って美術館には行ってくれても、生活用品として自分の生活の中に取り込むまではしてくれません。日本はファー・イースト(極東)なのです。ジャパネスクはあくまで一部の工芸品か、真逆にチープな土産物品的商品でしか通用しないと思った方が良いでしょう。

6)見本市への出展目的が気分的な「市場調査」ではなく、リスクを負って自社の命運をかける「販売促進」であるならば、いかに多くの成約に結びつけられるかが勝負どころです。それには何より見本市後の営業フォローが重要です。残念ながら多くの日本出展者は引き合いのあった先への迅速で的確なフォローを欠くために、釣った魚の取り逃がしが多すぎるように見えます。

小規模な事業者の方が海外見本市に出展する時代になりました。まずは自身で経験しないと分からないことが多いと思いますが、私が体験してきたことをぜひ参考にしていただければと思います。

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日本で和紙の研修を受けたフランスの女性デザイナーが、近郊の家庭婦人の内職を利用して作っている和紙貼り照明「CELINE WRIGHT」。職人のような緻密な手業はなく紙の貼り方はいい加減だが、逆にそれが味となって、こなれた価格と共にバイヤーに評判がよい。日本の伝統工芸産業もいろいろな方向性を模索しても良いと思う。

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カーテンの高級ブランドが集まるホール7「エディトゥール」に出展の「マナ・トレーディング(日本)」が発表した、和紙をオーガンジーに貼り合わせたカーテン生地。日本の素材は様々な潜在力を持っている。

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富山県高岡の「能作」の錫100%の器を利用したさくらフランクさんの創作料理。錫は少し力を入れて曲げると変形するので、料理を盛った後包み込むように閉めて出した器を、客の前で開けて供するなんて芸当ができる。

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スイスのNEWEBA社から日本のSuzusan の絞りランプ(光触媒で絞り布がいつまでも白く保たれる)とMetaphysのsusuki(LEDがわずかに点滅し、はかなく揺れるフロアライト)が発表されていた。サプライヤーがつけば、日本の照明デザインはもっと市場が広がる可能性がある。

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見本市オープン前夜に急遽買いに走ったぬいぐるみやガーデンツールを詰めこんだ八幡化成のカラフルな樹脂製バケツ。色のバリエーションの多さ(何色でも可能)、機能(蓋上から数百キロ以上の耐荷重が試されている)、値頃感の三拍子が揃い、特にイタリアなど色で勝負する国から発注が続出。

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伝統的ものづくりが集積する福井県越前市の漆器製造業、山田博之さん。生産者そのままで特に営業の経験もないのに、なぜか彼がTriTulaという新しいコンセプトの酒器をなれない英語で熱く説明し始めると、人が寄り、受注につながる引き合いも生まれてくる。

船曳鴻紅(朝日.com 2011年1月出稿)

メゾン&オブジェ(2) フランスのエスプリ

メゾン・エ・オブジェはアトリエ・ダール(フランス工芸作家協会)の主催で開催されてきた国内インテリア雑貨見本市で、二十年近く前まではフランスの小売店を相手にした本当に様々なインテリア雑貨がごったがえす見本市でした。デザイン性では劣りますが、それはそれでおもちゃ箱をひっくり返したようなおもしろさがあって、一般のパリ市民も入って数日間の間、パリの中に巨大な日曜市(マルシェ)が出現したかのような感がありました。

そのDNAを今でも引き継いでいるのがホール6とホール1~5*の後方部分です(前方部分はフランスの大企業が占めている)。1~5までは基本的に決まったバイヤーが毎年仕入れに来てくれるのを待つメーカーや問屋が多いので、目新しいものを並べるというよりはしっかりと売れるものを品揃えしているといった感じです。 (*ホール1はエスニック製品、ホール2は繊維製品、ホール3はテーブルウエア、ホール4と5はインテリア・デコレーション、ホール6がインテリア・アクセサリーという構成になっています。)

一方、新規の客をできるだけ多くつかまえたい、そのために毎年新開発の商品を発表し、できるだけ展示品に新味を持たせようとするのが、ホール6の「MOVING」とホール8の「NOW!」です。この二つの違いは、NOW!がまだ製品化されていないコンセプト段階のものでもOKなのに対して、MOVINGはあくまでビジネスの成立が前提とされる点です。

従って世界中のデザイン・メディアは、まずNOW!を追いかけます。今は街中にあふれている巨大座布団(BIG BOY・・・)などもここから発祥したのだと思いますし、これからの生活雑貨のイメージを先取りするアイディアにあふれています。日本勢でも、たとえば島村卓実さんがプロデュースした甲斐絹座の絹のホームウエア。ぐちゃぐちゃにたたんで繭のような木製パッケージに押し込んでいるのですが、中身以上にパッケージの可愛らしさがすごく受けていました。商品名も「hengen」で、お隣の能作の錫(すず)製品「jizai」とあわせて変幻自在。パリのデザイナーたちが作る「La Boite concept」のスピーカーは、遠目には普通の小机に見えたのが、PCを接続させるとそのままアクースティックなスピーカーに変身するというすぐれもの。

他のホールでもウイットに富んだ展示や製品は、ビジターをひきつけていました。中には魅力的な展示なので興味を持ってみると、実はグラフィック屋さんで実際の製品はあまり持っていないことも。ディスプレーの工夫と言えば、私たちの「crafTec」のブースに参加した八幡化成は、機能と意匠が抜群のバケツを持っているのですが、ただそれを並べただけでは魅力がない。ブース設営の日にそれに気がついて、バケツの中につっこむものをホームセンターに買いに走りました。ナスやオレンジ、ちっちゃなぬいぐるみ、ガーデニング・ツールなど。メゾン・エ・オブジェでは、こんな心遣いがとても大事なのです。

そんなメゾン・エ・オブジェの中でも、フランスのエスプリを代表している企業の一つがSIAです。造花をインテリアの一大要素に築きあげた功労者で、見本市会場の真ん中にあるホール5の入口正面に出展しているのですが、いつも華やかなディスプレーが際立っていて、見本市慣れしてしまった私でさえ「デコレーション」への憧れをかきたてられます。この「造花」の氾濫に加えて、もう一つのメゾン・エ・オブジェの特徴は「フレグランス」でしょう。香水からアロマ・オイル、お線香まで、百数十社を超える出展者がホール5の1/4ほどの面積に軒を連ねています。フランス見本市の極意は、本当のところこの辺りにあると私は思います。

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一つのブースを自身がデザインする二つのブランドに分けて、アピール力を倍増させるのに成功していた島村夫妻。「hengen」は繭から絹の衣服が脱皮して現れるイメージ、「jizai」はいかようにも形を変えられる錫のテーブルウエア製品を指しています。

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Laptopを置いてUSB plugをつなぐとオリジナルに近い音質を楽しめる机型のスピーカー。これからは益々家具と家電の境目が無くなっていくのだろう。

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やはりNOW!で、プレス・パッケージがなくなるほど、人気だった「IBRIDE」。昔の肖像画にデジタル処理して兎や山羊の顔をのせたスチール製の絵や、動物を模した組み立て紙細工のようなスチール製の家具が並んでいる。

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主催者側がインテリアトレンドを紹介する3つの企画展示の内で一押しされていた「un-plugged(メーカーがコンセプトを決定してしまっているパッケージ的商品からun-plugして、ユーザー自身がダイレクトに関わり変化させ使用するリアル・ワールドを指向する)」。ここでも癒し空間のために巨大座布団が使われていた。

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ホール5のインテリア・デコレーションの代表格、SIA。桜の樹やプラムの樹が満開の花を咲かせ、他の造花ブースに比べても華やかさで群を抜いている。

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ホール5のフレグランスのゾーンに出展していた石けんやろうそくの会社。大釜であたかも蝋を溶かしているような展示が目をひいた。周囲はアロマ・オイルやろうそくの展示ブースでうまっている。

船曳鴻紅(朝日.com 2011年1月出稿)