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2011年09月 アーカイブ

2011年09月08日

2011年9月メゾン&オブジェ

メゾン・エ・オブジェの9月はクリスマス商戦向けのインテリア・生活雑貨とアウトドア関連が中心ですが、今年は見本市の主催社であるSAFIが第一回パリ・デザイン・ウイークを立ち上げたため、例年に増して発信性が強くなりました。近年ビジネスがグローバル化してくると、見本市も1年に1回の開催では追いつかず、そのため常にフレッシュな情報が世界から集まっているという演出が求められるようになってきています。

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パリの北、シャルル・ドゴール空港に近いヴィル・パント(松の街)と呼ばれ周辺には松林が残る郊外に見本市会場はあります。ここでメゾン・エ・オブジェは年2回開催されます。

サローネと同様、世界のデザイン・ジャーナリストが最新情報を求めて集まるメゾン・エ・オブジェは、ホール毎にコンセプトと商材が振り分けられます。中でも特にデザイン性が強いのはホール7にある「now!」です。now!は、ビジネスというよりも新人発掘、これから伸びる商材を見つけるゾーンですが、ここ数年、各国政府が国内のデザイン振興をするための出展が目立ってきました。今年1月には日本から若手デザイナーを紹介するブースが出ましたし、この9月はシンガポール、タイ、スエーデンといったところが出ています。これからのグローバルな産業政策として、まずは90年代にイギリスが始めたデザイン振興策(若年層の失業対策の意味合いが濃かった)をなぞらえ、オリジナルな発想を持つ若手人材の発掘・育成が欠かせないという判断があります。

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スエーデンは近年、政府が厚いデザイン政策をとり、北欧諸国の中でも一歩先を行き始めています。

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東京の小規模なガラス・メーカーに特殊技術を見込んで製作依頼してくれたシンガポールのパトリック・シャ氏(製品は中央と右のガラス容器)。シンガポールにはこういった手仕事はないこともあり、日本の中小製造業の技術をとても高く評価してくれます。

ホール7の入口には、メゾン・エ・オブジェの主催社であるSAFIとパリ都市開発局がスポンサーする「TALENTS」というコーナーがあります。東日本震災への応援歌と、日本に住んだことがあり大の日本好きとして知られるエチエンヌ・コシェ社長の存在もあって、今年は6組の日本若手デザイナー集団がフィーチャーされました。中には三宅一生さんに推薦された高島一精さんが入っていたり、箱根寄せ木細工の若い職人達がグループとなった雑木囃子、また金沢卯辰山工芸工房出身の若手作家達がいます。特に自分の手で素材の段階から丁寧に作り上げる日本の工芸作品は、すでに国内でそのような手工芸産業をほとんど失ってしまった仏・英・独のビジターの目にあらためて新鮮に映ったようでした。

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ホール7の入口に設けられた「タレント」というコーナー。初日にはアランドロンなど有名人も来て華やぎを添えたそうです。

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見本市の目玉となる「TALENTS」に招待された卯辰山工芸工房出身の若手作家達。パリ市内の弊社TDCのギャラリーでは、13人の卯辰山工芸工房作家展を11月まで開催します。

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ホール7の「now!」ゾーンでは新進のデザイナー達がしのぎを削っています。中でも「molo」はメディアだけでなくバイヤーからも、リブ状の「紙」を間仕切り壁で高い関心を引いていました。経営するのは米建築家夫婦で、彼らが設計コンペをとった「ねぶたハウス」が昨年青森市に建設されています

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サンディ・チルウイッチ氏はもとはストッキングの会社勤め。1997年に左のストレッチ布を3段ボウルにした製品(長男の名前をつけたRay Tray)をヒットさせ、今や世界のテキスタイルメーカーとなりました。近年は建築家である夫も加わり、建築用床材にも進出しています。

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毎年のメゾン・エ・オブジェで最も活躍する日本人デザイナー島村卓実氏は、セーヌ河畔に新設されたCite de la Mode et du Design(モードとデザインのシティ)に入居するよう、熱いラブコールを送られていました。百人単位しか入居できないところ、すでに700を超す申し込みがあるそうです。

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ブナコは樹の細幅テープを巻いてボウルなどを作る、cuioraは米袋を縛る紙バンドのメーカー。そこで両者の協力でできたのが、紙バンドで作る照明の傘です。アジア製品に比べ格段に高価格ですが、オリジナリティとクオリティから、ドイツを中心として注文が入っていました。

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今や東北のクラフト産業の代表選手となったブナコ。写真の壁つけ照明は以前に日本で発表されたときは関心が薄かったそうですが、メゾン&オブジェで高評価でした。やはり照明の扱いが彼我では違います。

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江戸小紋染め「二葉」の小林社長もメゾン・エ・オブジェの常連組です。毎回売り方を工夫してて、今年はがま口を10個セットで出しました。これまでは作る商品カタログにこだわって、載せている染め柄以外はもって来なかったのですが、それでは自らの強みが出せないと気づいたのだそうです。そこで多種多様な染め柄を特定せず10個一括で売りに出したところ、いろいろな柄が楽しめると完売。

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今年フランスのクラフト作家達が集まったゾーンが出現していました。21世紀は生身の人間が演じるスポーツへの熱狂と同様に、ハンドメイドへの回帰の兆しを感じます。

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フランスでも伝統的な手工芸をコンテンポラリーな表現で生まれ変わらせようとしています。

一方、会場内に目立ち始めたのが3D印刷を使った製品でした。以前なら金型を含めて製作コストが合わないために手工芸に回されていたような製品が、3D印刷によって大量生産できるようになったのです。もちろん時間と人手をかけたハンドメイド製品に比べるとクオリティはまだまだですが、アイディア一発勝負で生まれてくるこれまで見たことのないような形までも作り出せるので多彩です。 昔は捺染技術を競った複雑なパターンのファブリックスが今や日本製の印刷機で安く作られるようになったのと同じで、ここでもまた人間の手業が駆逐されていくのかと若干疑問になります。

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 3Dプリンティング製作でカゴの中の鳥をオーナメントにした製品。

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樹脂系の素材を3Dプリンティングでプロダクト化すれば、複雑な形状の照明の傘でも耐火性や耐久性をクリアできるのです。

船曳鴻紅

2011年09月27日

パリ・デザイン・ウイーク

世界一のエキスポ・シティ、パリ 

パリは毎年数千万人の観光客が国外から訪れるだけでなく、数多くの国際見本市が開催される世界最大のエキスポ・シティ(産業博覧都市)だ。ファッション・インテリア分野だけでも1年間に27もの国際見本市がある。しかし近年は、ロンドン、ミラノなどの追い上げも激しい。すでに世界では、ファッション以外でもデザインが消費材ビジネスの牽引役となってきており、それを推進するデザイン・ウイークが世界の都市という都市に拡がる中で、パリも遅まきながら今年初めて加わることになった。

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メゾン・エ・オブジェの主催社であるSAFIは、現在PARIS CAPITALE DE LA CREATION(創造の首都パリ)という計画をパリ地域圏経済開発公団とともに推進しており、このパリ・デザイン・ウィークも彼らの主催だ。SAFIの役員によれば、この数年ほどの間にイタリアなどのインテリア・メーカーもショールームを次々とパリに開店させているので、その広報やプロモーションの需要もあって、大規模なデザイン・イベントを市内で開催する機が熟したとのことだった。

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メゾン・エ・オブジェの後半にかぶる形で9月12日から始まったデザイン・ウイークは、市内各所のショップ、デザイン施設で18日まで開催された。その中心となったのは2年前に開設されたLIEU DU DESIGN(デザインの場所)とセーヌ河畔に新設されたCité de la Mode et du Design(モードとデザインのシティ)だ。工芸職人が界隈にまだ残るバスチーユ地区に設けられたLIEU DU DESIGNは、パリ市のデザイン拠点とも言えるところで、デザイン業界の交流を図り、デザイン賞の推進や企業へのデザイナー紹介を行う。写真はパリ・デザイン・ウイークの立役者である、左からSAFI代表エティエンヌ・コシェ氏、その右腕フランク・ミヨ氏、LIEU DU DESIGN代表のローラン・デュテイユ氏達だ。

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Cité de la Mode et du Designはアウステルリッツ駅に近い船荷倉庫を、レストラン・バーや貸しスペースにリノベートしたもので、今後は若手デザイナー育成のために低家賃でオフィスを貸し出していく予定だ。デザイン・ウイーク期間中はメゾン・エ・オブジェnow!の場外版now!le Offが開催されていた。メゾン・エ・オブジェに出展するにはまだもう一歩という若手が、まずここで作品発表してnow!へのチャレンジ権を手に入れるのだろう。

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パリも東日本を応援している 

そのCité de la Mode et du Designでは、SAFIが震災後の日本を応援する「Dessine Moi le Japon(日本を描いて) 展」を開催していたのでぜひ紹介したい。

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ジョルジュ・アルマーニ、高田賢三、クリスチャン・ラクロア、シャンタル・トーマスといったファッションデザイナーからハビエル・マリスカル、カリム・ラシッド、コンスタンチン・グルチッチといったプロダクトデザイナー、さらに建築家ジャン・ヌーヴェルやパティシエのピエール・エルメといった錚々たる人々が、日本の震災復興支援のためにデッサンや写真のコラージュなどを寄せてくれていた。いずれ来年早々にこれらの作品のオークションを行い、売上を被災地に寄付したいとのことだ。写真はフランスで実力派のインテリア・デザイナー、シルヴァン・ドゥビュイッソン氏が寄せていた作品。

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実は私が今回パリを訪問したのは、メゾン・エ・オブジェの視察のためだけでなく、日本の伝統工芸を紹介する2つの展示を行うためだった。パリには国際交流基金の海外拠点としてパリ日本文化会館という立派な文化施設がある。これまで数多くの展覧会を開催し、また映画・演劇、茶道・華道の紹介などを通じて、日本文化をフランスに浸透させてきた。

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ここで現在「東日本からの声」という、東北地方の職人達による手工芸品の展示を行っている。今や全国で伝統産業の職人は高齢化しその数は減るばかりだが、その中で今回の大震災が起こった。彼らが再び前向きに仕事に取り組む意欲を持てるよう、フランスを始めとする海外の理解者を増したいと考えた。

http://www.mcjp.fr/francais/expositions/messages-de-l-est-du-japon-303/messages-de-l-est-du-japon

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もう一つは日本の若手工芸作家を応援する、パリ目抜きの通りに設けた弊社ギャラリー・スペースでの展示だ。金沢にある卯辰山工芸工房という研修施設では、陶磁器、漆、染め、金工、ガラスの5分野で、日本全国から選抜された研修生が研鑽を積んでいる。そこから巣立った若手作家達は今や日本の工芸を支える輝かしい才能となっているが、経済的に厳しい状況にあるのは伝統産業の職人達と同じだ。日本の伝統文化を失われた過去のものとしないためにも、ぎりぎりのところで頑張っている彼らにエールを送り、勇気づけていきたいと思う。

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写真は、パリの有名日本レストラン「花輪」の1階にあるショールーム。場所はモンテーニュ通りから一歩入ったところで、向かいはシャネルの本社、隣はフランス第一のラジオ局で、プロフェッショナルな発信力が期待できる。

http://www.craftec-japan.com/ja/showroom/

船曳鴻紅