北京オリンピックから1年経って・・・
パリのメゾン・エ・オブジェへの往きの旅程を北京に、復りを上海にとりました。一度に両都市を観るのは初めてなので、今回この中国を代表する2都市の違いを肌で感じとることができました。それぞれ市の行政の中核と思われる部署を訪問させていただいたので、ご紹介したいと思います。
まず北京では、商務部(日本の経産省に相当する)アジア局呂克倹局長にお目にかかる予定でしたが、呂局長のスケジュール変更で尹商務第1秘書とお会いすることになりました(中国では直前のキャンセルが結構あると聞いていたので違和感はないです)。尹さんは日本の官僚以上にスマートで意外なほどのソフトな語り口でした。おそらくアメリカかイギリスへの留学組だと思いますが、呂局長の方は日本に7~8年おられたとのことで日本語が大変流暢だそうです。ある年齢を境にして、日本語派、英語派と分かれているようです。

中国商務局 尹剛商務第1秘書(アジア担当)

北京市工業促進局 陳世傑処長
商務局担当官とは日本デザインコンサルタント協会*の紹介を始めとして、デザインと産業の関わりをごく一般的に話しただけですが、次にうかがった北京市工業促進局では、陳処長から北京市の今後の発展のためにデザインをどう活かしていったらよいのだろうと質問を受けました。現在街の中心部にあった工場を郊外に移転させていて、跡地開発が次々と課題としてあがってきているようです。そこで世界的にも有名になっている798廠の続きにあるデザイン開発区751 D.Parkを訪問することにしました。
*一般社団法人日本デザインコンサルタント協会として、58名の会員がデザイン・コンサルティングを行うことで日本の産業に活力を与えようと活動しています。
http://www.design-consul.net



「798廠」は、1950年代に建てられた巨大な国営工場が営業不振で操業を停止した後、廃屋となった工場の建物に1990年代からアーティストが自分のアトリエを開き始めて発展しました。今やギャラリーやショップが100以上もあるといわれ、北京市民というよりはデザイン好きな若者達が全国から観光をしに来る、青山・代官山状況になっています。

UCCA
中でも存在感があるのは近年オープンした「UCCA」ギャラリーで、オーナーはベルギーのユーランス夫妻。1500あまりの中国アートを収蔵する、世界でも有数の中国アートコレクターといわれています。私のアメリカの友人も1980年代後半から中国アートをコレクションしていましたが、アート・バブルがはじけたとは言え、今では相当な資産ではないかと思います。

その「798廠」に隣接するのが、ガスや石炭のエネルギー工場があった「751」です。2006年から開発が始まり「D.Park」と名付けられ、北京市としては今後ここにデザイン事務所、関連ギャラリー、展示会場などを集約させて、デザイン産業の起爆剤としたいようです。アートの方は、どこまでいってもギャラリー・ビジネスを越えられませんが、デザインは産業開発に直結するだけに北京市も今後相当の投資を行っていくのではないかと思われました。

そのほんの一部分ですが、ここはインテリアデザイン事務所とギャラリーが数社まとまって入居している建物。左手建物の1階がイタリアデザイン家具のギャラリー・ショップ、2階がデザイン事務所とテキスタイル・ショップ、地階が中国のコンテンポラリー家具ギャラリーとなっています。


家具ギャラリーには、中国最先端のデザインが並びます。中国デザイナーのコンテンポラリーデザインには二つの流れがあって、イタリアン・コンテンポラリーへの傾斜(写真上)と中国ネオ・クラシック(写真下)との2傾向です。

2階にあるテキスタイル・ショップでは中国メーカーのサンプル帳に混じって、ヨーロッパの高級ブランドのサンプル帳も入っていました。奥に各種ファブリックスが巻き状態で置いてあって、注文するとすぐに左に並ぶミシンで縫製してくれます。

北京杉杉玫瑰黛薇服装有限公司
D.Parkの中で最大面積のデザイン企業はRoseW fashion Co.でした。もともとチャイナ服メーカーですが、今はそれより欧米風の装い、特にパーティ・ドレスにシフトしています。しかしこの何年かの間はアート産業の方が実入りが良かったのでしょうか、2階の大部分は専ら現代アートのギャラリーと化していました。
わずか中1日の駆け足視察にも関わらずこれだけのスケジュールを組むことができたのは、三菱東京UFJ(MUFG)中国銀行のご協力があったからでした。柳岡頭取が日本の中小製造メーカーのこれからを探ることに理解を示して下さったのです。因みに中国MUFGは外資としては香港上海バンクに次ぐ大手銀行だそうです。東京銀行としての長年の実績が、人的信頼がとても重要な中国において確実に生かされています。アレンジをして下さり、かつ丸一日お付き合い下さいました糸井部長、石さん、本当に有り難うございました。

中国MUFGの糸井部長と石さん
(船曳 鴻紅)