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2009年ミラノサローネ・レポート

経済危機の中にあってミラノサローネは・・・
サローネの報告というと、有名デザイナーの新発表家具、メディアでの話題性に富むオブジェ的なプロダクト、街中で開催されるイベントの数々の紹介が一般的です。しかしここでは、サローネを中心とした家具産業の世界市場戦略についてレポートしたいと思います。

一年前の春から早くもイタリアの家具メーカーには冷たい風が吹いていました。しかも昨秋の世界金融危機は、このところの救世主であったロシア、ドバイを直撃し、サローネ会場全体に不透明感が覆っていました。そこにホール8のメインを占めてきたポルトナウフラウ・グループさえもがフィアット労組*の突き上げもあってか不参加を決定、大きく軌道修正を迫られたサローネでした。 *ポルトナウフラウ・グループを所有するシャルムは、フィアットの会長であるモンテゼーモロ氏のファンド
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そのポルトナウフラウ・グループの穴を物理的に埋めていたのはFIAMとザノッタでしたが、にわか仕立ての感はぬぐえませんでした。毎年サローネのアロケーション(出展位置)が参加企業に通知されるのは早くても前年の11月です。これだけの広い、しかも目抜きの場所を埋めるために、パズルのように出展社を動かしていくのは大変な作業だったろうと想像できます。
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そのミラノ・サローネの現場から、厳しい状況だからこそ逆に、世界のトップ・メーカーがどのような局面打開を図っていたかをご紹介しようと思います。世界ブランドとなった企業においても水面下でのたゆまぬ経営努力が続けられている実況中継です。

私の目に入ったトップブランド各社の商品戦略には、次の4つの対処法が見られました。
①アパレルメーカーとのタイアップ
②ファブリックスのプリント柄で新しさを出す
③高級子供家具といったニッチを狙う
④室内環境の変化をとらえる

(1) アパレルメーカーとのタイアップ
まず最初のアパレルメーカーとのタイアップですが、資本力が劣る家具メーカーにとって、売上的にも2つも3つも桁が違うファッションブランドとのコラボレーションによって、投資環境を改善させることは当然の帰結とも言えます。今年特に目立ったのは、デニム製品を中心とした高級カジュアル・ブランドで世界的に売上を伸ばすイタリアのディーゼル社です。ディーゼルは、家具はモローゾ、照明はフォスカリーニと組んで、大規模な展示を行っていました。現段階ではイメージ戦略といったところですが、今後ホーム・テキスタイル進出に続いて、リビング業界にも本格的に乗り出してくる気配を感じさせます。
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モローゾ+ディーゼル
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フォスカリーニ+ディーゼル
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トルトーナ地区で行われていたディーゼル展

この他にもアルマーニやミッソーニ、マリメッコ、KENZOなど以前からインテリア家具の分野に入っているファッションブランドは数多いのですが、日本のミラノ公使邸と同じ建物の中で開催されていたPoliform+ケン・スコット展は、イタリアのエージェントの奥深さを感じさせるものでした。
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もともと国内消費よりは全世界に向けてファッション商品を売っていくイタリアですが、それを支えているのは独立したエージェント達です。彼らは複数のメーカーの商材を肩に背負って文字通り世界に売って回っているのですが、私が以前知っていた椅子張り用のファブリックスを扱うイタリア人女性エージェントの場合、一人で毎回100数十キロのサンプルをかついで日本にも売り込みに来ていました。おそらくそんな一人だと思います。この60年代のケン・スコットを今につなげるPoliformのインテリア商品も、Poliform自身と言うよりは、1エージェントがコーディネートを企画して発表を行っているもののようでした。

(2) ファブリックスのプリント柄で新しさを出す
ところで今年ディーゼルの家具を発表したモローゾは、毎年イタリアン・コンテンポラリーの先端をきる提案力で耳目を集めるメーカーです。今年はパトリシア・ウルキオラがディレクションしたアフリカン・コレクションを市内の自社ショールームで大々的に発表すると共に、サローネ内ではだまし絵をプリントしたソファなど、開発に大きなリスクをかけずに新しさを演出する方法をとっていました。
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フェイクのパターン:だまし絵の手法で普通のソファをみごとに変身させている
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ウルキオラのアフリカをイメージしたプレゼンテーション
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コストを意識したアフリカのプリントを主体にした商品群

(3) 高級子供家具といったニッチを狙う
メリタリアが今年狙ったニッチはハイソな子供部屋です。ベリーニやペッシェといった大御所がなぜ子供用家具なのか。すでに昨年からドバイのジュメイラホテルのバービー・ルームは知られつつありましたが、世界のスーパー・リッチ、特にアラブ系の家族が世界旅行するときは、スイートに付属した子供部屋が必要なのです。超高級ホテル・チェーンに今後作られていくであろう、そういった子供部屋のニッチ需要を探っていると言えるのではないでしょうか。もちろん世界の富裕層の自宅にも利用されていくものです。
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メリタリアの子供用家具:マリオ・ベリーニ
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メリタリアの子供用家具:ガイターノ・ペッシェ
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若者向けスタイリッシュなMAGISも子供家具を発表
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イタリアのDOIMOグループはバービー人形のキャラクター家具を発表、大盛況

(4) 室内環境の変化をとらえる
最後に、人々の生活環境の変化に敏感に対応した商品開発です。実はこれこそが開発の王道を行くというか、インテリア産業としては本来もっているべき開発態度だと私は思います。今年はサローネと同時開催されるユーロ・ルーチェの年ですが、EUでは白熱球が規制されつつあって、ユーロ・ルーチェでも前回とうって変わってLED製品が主流となっていました。しかしLEDは光量にまだ難があって、全体に室内が暗くなりやすい。その解決法を家具の方から提案していたのが「鏡」の利用なのではないかと思いました。
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見本市会場で例年以上に目立ったのは、少しでも室内を明るくするための鏡の採用でした。ガラスのFIAMはもちろんのこと、ドリアデは壁面に絵画のように鏡を飾る提案を幾つも行っていました。
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ガラス家具のFIAMでは伊藤節&志信のダイニングテーブルと鏡も発表
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ドリアデは、オブジェのような鏡を使った壁面装飾をシーン毎に提案
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アヴァンギャルドなエドラでも壁面装飾として「鏡」

「鏡」がいやに目につくなと思ったのが最初ですが、初めはコストレスにインテリアデザインするため、価格のはる絵画に替えて鏡を壁面に飾ることにしたのかなと思っていました。ところがこの話をカリモクの加藤IDAFIJ会長にしたところ、昔は暗い室内を何とか少しでも明るくするために金の装飾を室内に施したので、鏡の目的もそれだろうと答えて下さいました。ベルサイユ宮殿の鏡の間はまさしくそれだったわけで、そう言えばドリアデのディスプレイも何となくベルサイユを思い起こさせるものでした。

(船曳 鴻紅)