ニューヨークは今__

ニューヨークに来たらまずMoMAですね。
TDCが1992年にオープンした時に「マリオ・ベリーニ展」をイタリア側で手伝ってくれたのは、今はMoMAのデザイン部門キュレーターとなっているPaola Antonelliさんでした。今回は谷口吉生氏による建築を知人の現代美術キュレーターCora Rosevearさんに案内してもらおうと、新しくなってから初めてのMoMAを訪ねました。映像展示も各所で行われていて、実に使いやすそうなミュージアム設計です。谷口氏の案が、MOMAのキュレーター達に圧倒的多数で採用されたというのも、なるほどと頷けます。

中庭の向こう側は事務棟(入口は別)

Coraがディレクションした常設展示(MoMAでは実はデザインでなく美術が主流なのです)

nendoの佐藤オオキ氏の作品も展示
ところでこのMoMAの中庭には昔、吉村順三氏の「松風荘」という日本建築がありました。それは現在フィラデルフィア市のフェアモントパークに移築されているのですが、この時の縁で吉村順三氏はタリータウンにあるジョン・D・ロックフェラー三世私邸の日本家屋、そしてマンハッタンのジャパン・ソサエティの建物を設計しています。

国連のすぐそばの土地(ロックフェラー三世から寄付された)に建つジャパン・ソサエティ(1971年に竣工)

内部は竹、水、石という自然の素材を大胆に用いている
民間ベースながら、日米の絆をどの公的機関よりも深くかつ強固に築いてきたジャパン・ソサエティの活動は、単なる文化交流の域を超えて、近年は「日米イノベーターズネットワーク」といったソーシャル・ワークにも力点を置いています。先月はミッドタウンのデザイン・リエゾンセンターで、IDEO社のヴァレリー・ケーシーを招いての「環境問題に対するデザイナーの倫理」をテーマにしたシンポジウムを開催しています。今回ジャパン・ソサエティとは、日本の地域文化を支える製造業の現場を伝えるべく、今後何らかの協力をし合いましょうと約束してきました。

中央がシンポジウムを企画したベティー・ボーデン部長
3日間のニューヨーク訪問では、この他にも日米をつなぐ何人ものキー・パーソンに会ってきました。下の写真は国連本部近くにオフィスを構えるHiro Odaira氏です。小平さんはClassic Craft Meets Modern Designをテーマにインテリアデザイン事務所を経営していますが、和紙をテーマにした展覧会を日本領事館で開催したり、地道な活動を続けておられます。sozo_commに参加している杉原商店のアメリカ東海岸での窓口でもあります。

小平氏 http://www.precious-piece.com/
またMIRA Design Corp.代表のJohn H. Miura氏はJETROのコーディネーターもされていて、ファブリックスだけでなく広く日用品雑貨の販路開拓を指導しています。日本で行われた米国市場開拓のためのセミナーではマニュアルに商品、販売店ごとの市場価格をあげていて、参加者は具体的にマーケットをイメージすることができたと思います。

三浦氏、JETROの蝉本氏と
以前から共通の友人を介して知っていた渡邊奈々さんとは、アメリカについて徹底して話し込んできました。彼女は写真家であると同時に、話題作「チェンジメーカー~社会起業家が世の中を変える」の著者でもあります。
彼女との話の中で、私がへえ~っと思ったことが2つ。1つはハーバードといったトップの私大に入学することが近年とても難しくなっていたということ=億という単位の寄付をするか、マイノリティ枠か、何世代にもわたってハーバード卒でなければ。理由はどうやらベビー・ブーマーの高学歴女性(クリントン)の子弟が入学するのが近年に集中していたからのようです。2つめはNYのお金持ちのライフスタイル=話を聞いているとウディ・アレンの映画そのままの(とても複雑な)暮らしぶりです。徹底した個人主義が貫かれていると思いました。
消費生活というレベルで話をすると、NYのお金持ち相手のアート・ギャラリーは日本のように銀座通りに面した店など持ちません。一見の客などハナから相手にしていないので、超高級コンドミニアムの1室を使ってごく限られたクライアントにクローズドにお見せしているだけのようです。
NYほど世界の中で貧富の差が激しい街はないと言います。大不況下で厳寒のマンハッタンだったということもありますが、5番街を歩いても路上では何の豊かさも感じられませんでした。ティファニーもフラッシーな外装のヴュトンも賑わいどころか何のオーラも発散させていません。おそらく「スーパー・デラックス」な生活は、本当はこの裏側で演出されているのだろうなと、奈々さんの話を聞いた後では思わざるをえませんでした。

その5番街を少し西に入ったところに、JAPANブランドのニューヨーク展を開催しているフェリッシモ・ビルがありました。フェリッシモは日本では有力な通販会社ですが、ここNYではビルを90年代からもっていて、以前は高級雑貨などを扱うショップだったのが、最近はギャラリーとしての利用をしているようでした。


中ではビジネス・マッチングのパリ三越エトワール展とは違ってテスト販売会としての展示を行っていたのですが、私が訪れたときは、出展企業も人を出していなく客の出入りもほとんどない静か~な状態でした。先ほどの話に戻れば、貧しい者と富める者のギャップが極端に激しくお互いが混じることがないニューヨークでは、日本やヨーロッパのような路面店的な売り方ではない、何か別のやり方を探る必要があると感じました。

インテリア・生活用品のメガストア Bed Bath & Beyond
これが現実のニューヨーク・ライフスタイルだと思います
(船曳 鴻紅)