今年の審査委員には、女性ジャーナリストの木田隆子さんに参加してい ただきました。木田さんは、TBSブリタニカの女性誌『フィガロ ジャポン』に創刊からかかわり副編集長になられた後、男性誌『ペン』 の創刊にも参加、のちに編集長となりました。2005年12月からは、アシェット婦人画報社で『エル・デコ』日本版の編集長をされています。エル・デコに移って、デザインとインテリアに関して集中的に表現してきた木田さんのこれまでのキャリアが集大成されているように感じました。

この夏虎ノ門から青山通りに移転したエル・デコ編集部
一般に女性向け文化雑誌の編集長というと、大学での専攻は仏文とか英文とか、人文系が主流だと思うのですが、木田さんは同志社大学法学部政治学科を卒業という、いわゆる「硬派」。今までのお仕事の思い出を語っていただくと、『ペン』の創刊間もない頃に、時間をかけてじっくりとイギリス取材をしてまとめたブレア政権の若きブレーン達へのインタビューなど、ちょっと出てこないようなお話もうかがうことができました。それでいてとてもチャーミングな方です。

レティツィア・モラッティ ミラノ市長と木田隆子さん
(*レティツィア・モラッティ氏はベルルスコーニ政府では教育省大臣もつとめた政治家)
毎年エル・デコは、4月のミラノ・サローネ期間中、前年のインテリア・プロダクトから12ジャンル(家具、照明、ベッド、ファブ リック、バスルーム、テキスタイルなど)にわたり、優れたデザインを選びます。エル・デコ・インターナショナル・デザインアワードと呼ばれるこの賞の受賞パーティが、今年もミラノ市内のヴィエルサーチ・テアトロで開かれました。ジャン・ヌーヴェル等大御所が並ぶ中、今年はテーブルウエアの部門で、深澤直人さんが受賞。実は深澤さん、去年はデザイナー・オブ・ザ・イヤーという大賞も射止めておられ、日本人への評価は確かなものとなってきているようです。

そんな世界での日本人デザイナーの活躍をメディアとして支えているの がエル・デコ日本版です。木田さんによればエル・デコでは、2 年に1回は世界24ヵ国にある各国版の編集長が集う世界編集長会議があるなど、インターナショナル・マガジンとしてお互いに自国情報を交換し合うのだそうです。
木田さんは「デザイン・ジャーナリズムの分野で、昔はインターナショナル・マガジンは海外情報の輸入代行業でした。 今は日本の今の時代の情報を世界に届ける輸出業になってきていると思います。それだけ日本のデザインの実力があがっているし、世界のクリエイター達が日本に視線を集めています。自分たちはそれを世界に出していく役割と考えて、24人の編集長の情報サーキットの中に入っているメリットを生かしていきたい」と語っておられました。
その木田さんに紹介していただき、この9月ミラノのエル・デコ編集室 を訪問してきました。ミラノ中心市街から車で北へ15分ほど行っ たところにイタリアのアシェット社社屋があります。エル・デコ編集室 を訪ねるには1階の警備の窓口を通らなければなりません。パスポート を預けなければならないほど警備が厳重なのにとまどいましたが、そん なことに驚くのはやはり天下泰平の日本から来たためかと思い返しまし た。しかし、よそよそしいのはそこまで。いったん社内に入ってしまえ ば、見知らぬものでも気軽に声をかけてくれます。

イタリア版編集長のリビアさんはとても気さくな方で、編集締め切り間際の最も忙しいときにお訪ねしたのに快く迎え入れてくださって、日本のデザイン状況など話は尽きませんでした。

一番左側がエル・デコ・イタリア版編集長のリビア・ペラルド・マトンさん
(船曳 鴻紅)