次にご紹介するのは、セレクトショップのパイオニアである「センプレ・デザイン」代表の田村昌紀(まさとし)さんです。インテリア・コーディネートを職業とされる方であればセンプレ、そして田村社長を知らない方はいらっしゃらないでしょう。センプレは、1997年東京デザインセンター1階に1号店を開いて以来、そのデザイン・クオリティに徹底的にこだわる姿勢が多くのファンを生み続けています。ヨーロッパの専門店のように、小さくても特徴のあるものを売ること。田村さんの「店を大きくする目的はまったく持たない、最初から日本で一番小さいお店を目指すことを目標にしていた」という信念が、センプレの店の端々に表出されています。
1999年に南青山の骨董通りに開店したセンプレショップ
田村昌紀さんは、お母様が子ども服の「ファミリア」の創業者のお一人であるという、いわばデザイン界における「銀の匙」組です。芦屋から横浜元町、銀座と店舗展開を進め、戦後モダン・ライフスタイルの先端を切りひらいた「ファミリア」を、青少年時代の環境として育たれたのだと思います。大学に改組して程ない武蔵野美術大学で工業デザインを専攻された後、サーリネンやイームズを輩出しアメリカ・デザインの一時代を画したミシガンのクランブルックに留学されています。米国のデザイン事務所に勤務後、帰国、その後30年にわたる活躍は皆さんが知るところです。
田村さんには、ヨーロッパのインテリア見本市でよくお目にかかります。私が東京デザインセンターをオープンさせる前後、見本市でお見かけしてはすぐに横について、これはと思う製品の来歴、製造、素材などなど、よく教えていただいたものです。欧州インテリア見本市についてこの方ほど知見の豊富な方はいないと思われる、そんな田村社長に、sozo_commのあるべき姿についてうかがいました。以下は、うかがった内容を私なりに解釈させていただいたものです。ぜひsozo_commだけでなく、海外見本市に出展をお考えの方には参考にしていただきたい内容だと思います。
■sozo_commはデザインコンペではなく、海外市場で売れるモノは何かという視点で審査するべきでしょう。
■海外市場で売るということは即ち海外市場での受け皿(流通)が作れるかどうかがポイントです。
■日本でも、インテリアライフスタイル展など全体のレベルが上がってきていると思いますが、逆に、日本の小売店ではこれらの商品の取り扱いが少なくなって来ています。理由は、小売店におけるリビング雑貨の売り上げの伸び悩みもあるし、小売店の仕入れ担当者の見る目の質的な向上が伴っていないということもあるのでしょう。
■例えば、インテリアライフスタイル展でのバイヤーの動きを見ていると商品をしっかり見てまわるという姿勢ではなく、取引先を訪ねまわるという姿勢になっており、これではいい商品を見分けることができないのではないかと思います。
■バイヤーとしてインテリアライフスタイル展の会期中毎日訪れましたが、残念なことに多くの出展者がブースで受注するという体制を整えていなく、受注するという営業マインドが感じられませんでした。----ブースでは挨拶をする程度で、展示会後にバイヤーなり取引先なりにカタログを持参して説明し、受注をとるといった営業姿勢が習慣的になっている。これでは展示会で本来するべきこと(受注)をせずに、展示後のフォローアップでカバーするという無駄な動きになっている。買い付け側にとってはわざわざ展示会に行くのに商売が成立しない上に、その後に営業されることで時間的にも大きな無駄に付き合わされることになる。
■欧米では展示会は買い付けの場であり、またバイヤーとメーカーが商品1点1点について会話をする過程でさらなる商品開発につながることもあり、そのようなプロセスが両者にとって貴重だという認識があります。
■モノが売れることに大切なのは、企業内に取引を継続して行える相手(対話をしていける相手)がいるかどうかが大事で、それが継続的な信頼関係につながります。たとえば、展示会で話した内容がその後の企業側の取り組みとしてどうなるのかも、信頼関係が築けるかどうかのお互いの判断材料になります。
■展示会には、代表者なり、担当責任者なり、権限のある人がいなくてはなりません。展示会の後でお答えしますといった「持ち帰ってからの話」にするのでは意味がない。バイヤーも展示会だからこそ来るわけで、そこで話がつかないようでは全くナンセンスと思われてしまいます。
(船曳 鴻紅)