サローネ国際家具見本市に見る今年のトレンド
少し時間が経ってしまいましたが、今年のサローネ期間中にミラノで見られた家具のデザイン・トレンドをご紹介することにします。このところ目立っていた世界の富裕層向けの「アート・オブジェ」的家具が一服して、全体として落ち着いてきた感がありました。昨年秋からのサブプライム・ローン問題による世界金融の収縮、ドル安(アラブ世界の投資運用にも影響)が一番の理由だと思いますが、この数年で世界の喫緊の課題と認識されるようになった地球環境問題も影響を与えています。
まず昨年、Bisazza でモザイクタイルを使った巨大オブジェを作ったスタジオジョブ(写真左)やハイメ・ハイヨンの傾向は、今年は同じくスーパ-・ステュディオ会場内のマルセル・ワンダース(ベビー・コットの10数倍の大きさのテーブル・ランプ)に見ることができました。しかしあくまでもインスタレーションといった感じです。

昨年ロン・アラッドはドルチェ&ガバーナのメトロポールで派手に発表を行いましたが(写真右)、そういった「デザイン作品」をギャラリーがアートとして扱うのは、ここミラノとロンドンが活発です。サローネ期間中、市内のいくつかのギャラリーでは往年の名作が披露されていました。左はメンディーニの作品。

毎年トレンド・セッターとして期待のかかるマルセル・ワンダースは、mooiの新規開発としてタータン地のテキスタイルを発表。左はその生地を椅子の脚に巻いたもの。

このように近年はファブリック・メーカーと家具メーカーの接近が目立つようになってきました。ミッソーニはデュポンと組んでミッソーニ柄の樹脂製オブジェや家具、システムキッチンの表面材を発表しています。

コンテンポラリー家具の第一線カッペリーニは、今年は市内ショールームでラグ・カーペットを発表しました。日本のnendoもフィーチャーされていましたが、左の写真はカルロ・コロンボのもので、シャギーの毛足の長さや織りを多様に組み合わせたもの。工芸的な要素を実用性に結びつけた魅力的なラグでした。右の写真は、フィンランドのテキスタイル・メーカー、マリメッコがフィンランドのスターとなったハッリ・コスキネンにデザインを依頼したものです。

今年一番記憶に残ったのは、そのマリメッコの展示会場で案内をしていた女性達のユニフォーム。本当に愛くるしかった。来年は他のメーカー会場でも個性的なユニフォームが見られるようになるかもしれません。

さらに一昨年にヘラ・ヨンゲリウスがヴィトラで発表した、ボタンや縫い糸でことなった色の布地をコーディネートの影響はその後も続いていて、そこかしこに、現代の生産技術にハンド・クラフトの要素を持ちこんだ作品が垣間見えるようになりました。その中でも、圧倒的に来場者の関心を集めていたのは、モローゾで発表されていたEdward van VlietによるSushi Collection。クラフト・モダンと呼べるジャンルのものですが、完全に日本の伝統意匠がカヴァーされてしまっていました。日本のメーカーさん達もがんばってください!


最後に、洞爺湖サミットにシンボライズされる世界的な「環境」意識が、ミラノではこうでしたという報告をします。イタリアの世界的デザイン誌「インテルニ」は、ミラノ市の協力を得て、毎年大がかりなイベントを市内で組みます。今年はミラノ大学のキャンパスを借りて、「Green Energy」をテーマにして世界のスター・デザイナー達に多くのインスタレーション作品を依頼しました。日本からは喜多俊之氏が三洋の太陽電池による照明インスタレーションで、インテリア製品では吉岡徳仁氏、伊藤節&志信氏達が参加していました。


しかし残念ながら、全般的に「環境」の表層的な扱いしか見られず、環境技術を用いた作品はごくわずかでした。日本のメーカーとのもっと幅広い連携があれば、意味のある展示になっただろうにと思いました。サローネ見本市会場内では、やはりグリーンを標語にした「サテリテ」会場も、単なるイメージだけの内容でした。「環境」意識をデザインで表現するのは、イタリア人にとってなかなか難しいことのようです。
(船曳 鴻紅)
