匠の技術の黄金郷を訪ねて
9月の初旬は北陸3県と岐阜を巡っていました。金沢で開かれた【北陸先端大】伝統工芸シンポジウムに招かれたためですが、良い機会なのでsozo_commに応募された企業を始めとして地場でがんばられている企業を訪問させていただきました。最初の富山県越前市で燃費の良いプリウスを借りて、今立・鯖江、金沢、白山、能美、輪島、高岡、高山、下呂、岐阜と巡り、各所でそれぞれの産地をリードする「地元プロデューサー」とも言うべき方々と意見交換を試みました。
金沢のシンポジウムは「石川伝統工芸イノベータ養成ユニット」事業のキックオフで、伝統産業を軸に地域再生を図ることのできるイノベータ(革新者)の養成を北陸先端大が行うというものです。私は日本の伝統工芸産業の存在理由は単に伝統文化へのノスタルジーにあるのではなく、日本の製造業を底で支えている「品質と技術と素材の探求」を行う人材の輩出にあると思っているので、このプログラムが継続して成功することを切に願っています。
次に向かったのは、全国の漆愛好者が年1回集まる「漆を語る会」が開催される輪島市です。日本の伝産地の中でも漆器は陶磁器以上に落ち込みが激しく、伝統漆器は最盛期に比べて売上高が1/4とさえ言われるようになっています。しかしその中でもメーカーが直に消費者につながる、または海外のファッションブランドに直接卸すといった、将来に明るい兆しをもたらす企業活動をされる方々がおられます。元々漆器の土台となる木地のメーカーだった桐本さんは、能登半島地震の被害から回復しきれていない今だからこそ、あきらめないで挑戦を続けるべきだと語っていました。
輪島・塩安漆器工房 
外に向う桐本泰一氏 
北陸3県を後にして国道41号線を高山へと走りました。神通川上流の渓谷に沿った気持ちの良いドライビング・コースです。高山はちょうど飛騨家具祭りの真っ最中。飛騨産業、柏木工、シラカワなど人気の家具メーカーの本社ショールームには全国から大変な数の来客があって、言われる構造不況などないかのような盛況でした。写真は、杉の間伐材を利用した「森のことば」で有名な飛騨産業の岡田贊三社長です。岡田さんは以前エコロジストとしてホームセンターを経営していたこともある異色の家具メーカー経営者。日本の地場産業も単に年齢による世代交代だけでなく、経営哲学も変わりつつあることを実感させます。
飛騨産業の岡田社長
比べて街の外に前県知事の肝いりで造られた飛騨・文化生活センターの大ホールで開催された「家具と暮らしの祭典」の方は、単なるディスプレイという感じで人気が少ないのが気になりました。やはり実商に結びつかないショーは、メーカー側だけでなく購買を目的とするビジターには魅力が薄いのですね。
飛騨の匠実演会場 
そのセンター広場で開催されていた飛騨の匠の実演ショーと、高山家具コンペの展覧会は楽しませてもらいました。高山だけでなく隣町の古川には「飛騨の匠文化館」もあり、飛騨は地理上の日本のヘソであるばかりでなく、匠文化のメッカでもあるようです。家具コンペの最優秀作品に選ばれていたのは、まだ入社数年目という、うら若い女性のもの。椅子が簡単にベンチにも変わるというアイデアも斬新な作品で、こういった若い人達がこの高山を目指して入門してくるという状況はこれからを期待させるものがあります。
家具コンペ最優秀作品
ところで、福井から岐阜まで一人ドライブを楽しんだのは良かったのですが、全行程1000km弱の最後のところで台風9号による新幹線運行中止で岐阜羽島駅前ビジネスホテルの1泊が加わってしまいました。もうこれで家に帰れる、というときのトラブルは堪えますね。
(船曳 鴻紅)